あおねこ物語

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刑事訴訟法まとめ その4

問:窃盗幇助罪の公訴事実で起訴された被告人の公判で、検察官は、これに盗品等有償譲受罪の訴因を追加することができるか。

公訴事実とは、訴因として構成される前の社会的な事実をいう。また、訴因とは、社会的な事実(公訴事実)を法律的に再構成して、検察官の立証によって起訴状に記載された罪となるべき具体的な犯罪事実をいう。

裁判所は公訴事実と訴因のいずれを審判の対象とすべきかが問題となるところ、裁判所は訴因を審判の対象とすべきである。なぜなら、当事者主義的訴訟構造から、捜査機関が抱いた嫌疑たる公訴事実を裁判所が引き継ぐことは不可能だからである。

しかし、そうだとすると、訴因事実と裁判所の認定事実に相違があった場合には、裁判所は無罪判決を下し、再度別訴を提起しなくてはならなくなってしまう。もっとも、訴因を変更(追加を含む。以下同じ)するとしてもそれは有罪を確保するための便宜的なものにすぎないから、自由に認めるわけにはいかない。

そこで、これらの調和の観点から、公訴事実の同一性を害しない限度である限りは、訴因の変更が認められると解すべきである(刑訴法312条1項)。

 

312条1項は「公訴事実の同一性を害しない限度」と規定するのみである。ここで、「公訴事実の同一性を害しない」場合とはどのような場合を指すのか。この点について規定がなく、訴因変更の可否の判断基準が問題となる。

ここで、窃盗幇助罪と盗品等有償譲受罪は両立しうることから、公訴事実の単一性が問題となる。なぜなら、刑訴法は刑法上の刑罰権を適正に実現するためのものであり、実体法上一罪であれば訴訟法上も一罪であるからである。したがって、実体法上一罪であれば公訴事実の範囲内であり、訴因変更は可能であると解する。

以上を本件について見るに、窃盗の幇助犯から盗品等有償譲受罪への訴因の追加については、窃盗の幇助犯と盗品等有償譲受罪は併合罪関係にあることから、公訴事実の単一性は認められない。したがって、訴因の追加はできない。